1993年8月 自治労連第9回定期大会の発言

33年間の発言と退出 - 1993年8月 自治労連第9回定期大会の発言

1993年8月 自治労連第9回定期大会の発言

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33年間の発言と退出
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webmaster 2011-5-30 14:54

1993年8月
自治労連第9回定期大会の発言

公務員労働者の権利拡大闘争の視点
−8月3日にだされた人事院勧告に関連して

育児休暇闘争と実効ある男女雇用平等法策定・労基法改悪反対闘争の教訓を看護・介護休暇要求の前進にいかすために

わたしは本大会に先立って開かれた婦人部大会での討論をふまえ討論に参加します。
第6回婦人部定期大会は131名の代議員と150名近い傍聴者の参加の下たたかう方針を確立してきました。

婦人部大会の特徴のひとつは例年に比して共同する会からの傍聴者の参加が多かった事です。
大会討論は、男女賃金格差の解消、臨時・非常勤、関連労働者の組織化や労働条件の改善、のたたかい、看護・介護休暇制度の改善や獲得で多くの成果をあげた事。さらには、小選挙区制粉砕や憲法擁護、革新自治体建設など国民的、労働者的課題や闘争において婦人のエネルギーを発揮し、運動の前進と高揚に大きく貢献してきた婦人部活動の実際が語られ、参加者の共感を呼び、全体の確信となりました。この全国各地でのたたかいの教訓を全国にひろげることの重要性も強調されました。
こうした討論を経て全会一致で採択された婦人部方針の立場から本部方針に対していくつかの点で意見と要望をのべます。

第1は8月3日にだされた人事院勧告の介護休業に関連して権利拡大闘争の視点と対政府闘争のあり方について意見をのべます。
自治体にはたらく婦人労働者の実態はこの10年間で著しい変化がおこっています。それは、権利行使の低下です。職場民主化のバロメーターといわれる生理休暇の取得率が、昨年秋の全労連調査では、全体で17.7%となっています。ところが自治体職場は、9%にとどまっているのです。

これは、臨調行革による人員抑制、三無主義による週休2日制の導入、0A化の促進、仕事量の増加と能力主義や、職階給の強化などの公務員賃金・制度の改悪といった権利意識に対してのイデオロギー攻撃が強化されてきていることを物語っています。
この点では、「予算・人員」闘争と権利行使のたたかいの結合、「権利が行使できる人員要求」ではなく、「権利を行使して住民の要求に応えられる人員増」との実践的たたかいの構築がもとめられていると考えます。

今ひとつは、労働組合運動における権利拡大闘争の視点の問題です。1975年は多くの点で転換期といわれた年です。国際政治の場では、アメリカのベトナム戦争での敗北とそれにつづくアメリカの経済的地位が低下した下でのサミットの開始。国連婦人の10年へとつづく国際婦人年でもありました。国内では、今日までつづく春闘連敗への道をひらいた財界の反転攻勢とそれに屈服した労働4団体の賃金自粛路線が始まった年であり、権利拡大闘争においても、その後の労働組合運動の権利拡大闘争に大きな影響を与えることとなった「保母、看護婦、教員の育児休業法」が議員立法で成立した年でもあったのです。

公務員労働者の権利はストライキ権の剥奪で憲法違反の国公法、地公法によって規定されています。しかし、国家公務員法制定の国会答弁において労働基準法の趣旨は尊重されるとしています。
憲法27条に基づき制定された、労働基準法は女子保護規定をはじめとした様々な労働者の権利を有給とは明記していませんが、第1条第2項において、「この基準は最低のものであり、これを基準として労働条件を低下させてはならない」としており、あわせて労使双方に労働条件向上にむけての努力を義務づけています。
労働組合はこの理念に基づき権利拡大、有給獲得で多くの成果をあげてきました。

ところが75年の「育児休業法」はこうした到達や労基法の理念を踏みにじる内容を含んでいました。それは、法制定の手法として、さらなる官民分断を持ち込んだ事、公務員の賃金・権利に対し無給を法律で明記した事、在職しているにもかかわらず一時金を支給対象から除外した事、法の規定を最低基準ではなく最高基準するなど、公務員労働者の権利拡大に重くのしかかってきました。しかし、わたし達自治体労働者は各地で、職種の拡大など法を上回る条件を勝ち取ってきましたが、労基法の規定である生理休暇や産休、育児時間などの有給を獲得した権利と比較するならば、その到達は低い水準といわざるをえませんでした。さらには、長期に休んで人に迷惑をかけるのだから無給はあたりまえとした意識や代替がいないから、育休とれないとした事態さえつくりだされる事さえありました。また、一時金の不合理是正を全面にかかげた闘争も部分的にしか組織されませんでした。

つぎに、対政府闘争との関連では、1978年の労基法研究会報告による労基法の改悪に対するたたかいで、「均等法」とセットで労基法の悪を政府が提起するまでの対政府闘争の時期は我々は総評の胎内にあって運動を展開してきました。婦人少年問題審議会、国会審議の段階では統一労組懇として大きな運動を組織をしてきました。こうした経験から国会闘争のみを強調する傾向が全労連部隊に存在することも事実です。

このような状況を経て1991年男女労働者を対象とした「育児休業法」が成立しましたが、ここでも公務員法は最低基準でなく最高基準となり、部分休業という形で時間単位の休暇にも無給攻撃が持ち込まれ官民の分断だけでなく、地公、国公の分断が行われただけでなく、労基法の大部分適用である地方公務員の権利を限りなく人勧体制の枠のなかに押し込めようとする攻撃が強化されたと言わざるをえません。

こうした育児休業法のたたかいの経過からみても使用者である自治体当局に対するたたかいの強化とともに、法の位置付けやあり方、憲法27条に基づく労働者の労働条件規定の基本法である労働基準法の理念を後退させない、労働者の分断を許さないなど基本的・根本的問題での対政府闘争の強化が求められていると考えます。

今回の人事院勧告の介護休業における無給の考えに対する公務労組連絡会内での各単産の評価は様々です。

育児休業法のときは、75年の育児休業法があり、政府が法制定の意志を明らかにし、法案要綱を発表して後に人事院が意見の具申で無給を打ち出したのに対し、今回の介護休業では、政府がいまだ法制定の時期や内容を明らかにしていない時点での人事院の無給の打ち出しは、公務労働者のみならず、全労働者に与える影響は計り知れないものがあります。人勧体制が、すべての労働者の権利抑圧機構としての面を一層むきだしにしてきた事を物語っているといわざるをえません。こうした分析がなされていないことは非常に残念です。このことは、この間の家族看護・介護休暇闘争において、国会闘争と対人事院闘争が強調され、対政府闘争が十分に構築されなかった事にあらわれているのではないでしょうか。確定闘争をまえに家族看護・介護休暇要求の前進にむけ婦人部大会では、対政府闘争の強化を決定しました。

家族看護・介護休暇要求だけでなく、自治体労働者の権利拡大にむけ、人事院規則の適用でなく、労基法の大部分が適用されている自治体労働者の権利についての法制定のあり方や休暇要求での所得保障のあり方について自治労連としての基本的立場や方針を明確にすることを強く要望するものです。

第2は家族看護・介護休暇要求との関連で、地方共済組合法の法定給付である休業手当金の問題です。自治体職場においても過去の闘争の経過から全国に自治体職員であっても政令都市を中心に健康保険法適用の43健保組合法が存在しています。健康保険法には休業手当金の制度はなく家族看護休暇をとっても所得保障の面で格差が生じているのが実態です。健康保険法適用下での休業手当金に相当する措置の要求や地方共済組合法適用下にあっても、扶養者でない家族の場合の家族看護休暇取得での休業手当金の支給拡大のとりくみ、そして、国や人事院の動き次第では地方共済組合法を改悪させないとりくみなど、休暇に付随する様々なとりくみをしなければならないことが予測されます。なぜなら法定給付であっても、国家公務員共済組合法と地方公務員共済組合法では、休業手当金の支給率、算定基礎に違いがあり、低位平準化攻撃もよそくされます。

第3は社会保障闘争の課題です。
本部原案では、年金の支給開始年齢の要求を60才としています(減額繰り上げ年金の支給開始年齢を55才)。婦人部大会方針では支給開始年齢を55才の元にもどせとの要求を決定しています。
これまであった船員や抗内労働者に対しての特例措置や、看護婦など深夜労働を余儀なくされている苛酷な労働条件の下にある労働者のあらたな年金要求結集の道をひらく要求としていくべきだと考えます。

また、代議員全員に配布され、小林書記長も強調された学習の友においてP14の女性と年金の項ははたらく婦人の視点があまりにも希薄だと指摘せざるをえません。「男女格差、離婚の自由もない」との打ち出しはまさに政府のいう女性のライフサイクルの視点での問題ではないでしょうか。8月24日の毎日新聞の社説では、結論は別としてもっと広い視点で女性年金問題をとらえていたことも紹介しておきます。

ILOが1984年に出した「21世紀にむけての−社会保障の発展−経済、社会変革に対する社会保障制度への対応」という報告書のなかで『社会保障は男が男ためにつくったもので、女性が社会で負っている責任についての認識がたりないという指摘がある。さらにあたらしいライフサイクルで生活しているものに対し、古くなってしまった道徳観念や扶養に対する考え方でペナルティを課そうとするところがある』と指摘しています。まさに年金闘争において抜本的意識変革を労働組合運動の場においても求められているとかんがえます。

最後に福島副委員長が強調された女性の地位向上、社会的平等、女性の社会進出、労働組合幹部への女性の登用などの提起ですが、自治労連としてそれを達成する目標や具体的計画を早急に確立されるようのぞみます。

男女平等社会への実現にむけての男女の共同とした本部原案の参加・連帯論ではなく、組織の構成員の状況を役員構成や機関会議の構成反映し、自治体労働運動に女性の視点を盛り込み、運動をより豊かにしていくとした、女性の参画の視点こそ重要だとかんがえます。 

わたしは、参画の立場から当面する小選挙区制阻止、憲法改悪反対、埼玉での自治体にはたらく全国交流集会の成功や来年静岡で開催される第40回母親大会の成功に全力をあげる婦人部大会の決意をのべて発言をおわります。

 

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