1995年1月 北京レポート

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33年間の発言と退出 - 1995年1月 北京レポート

1995年1月 北京レポート

カテゴリ : 
33年間の発言と退出
執筆 : 
webmaster 2011-6-2 10:03

1995年1月
北京レポート

−すくない女性職員、3割にほど遠い女性管理職、男女の賃金格差−
大阪の自治体にはたらく女性の実態
大阪自治体職員女性ネットワーク

[I]はじめに

ナイロビ将来戦略は、労働と社会参加における平等について「133.婦人が、経済のあらゆる分野において、管理的な地位を含め、技術、及び責任をより多く必要とする仕事に就くことができるようにするために、社会的認識、政治的支援及び制度的、財政的資源を動員するための手段を提供するような政策がとられるべきである。」

「88.政府は立法及び行政的措置により、国、州、地方レベルの意志決定過程への婦人の参加を確保する必要がある。・・・婦人が平等に代表することが達成されるまで・・・特に意志決定及び政策決定者の地位への婦人の採用、任命、昇進を増加させるための特別な活動を実施すべきである。」など女性の管理職への参画について方策を講ずべきことを明確に述べている。

また、「ナイロビ将来戦略の実施に関する見直し勧告」では「政府、政党、労働組合、職業団体、その他の代表的団体は、・・・指導的地位に就く婦人の割合を、1995年までに少なくとも30%にまで増やすという目標をめざし・・・」と具体的目標を明示している。

日本においては、憲法第14条と、地方公務員法13条で性別による差別は禁止されている。しかしながら1986年に制定された「男女雇用機会均等法」は、私たち自治体にはたらく女性は適用除外になっている。

こうした、法制度のもとでの大阪の自治体にはたらく女性の実態を報告する。(1994年6月調査)

[II]雇用・採用差別

どの自治体をみても事務職全体に占める女性の割合は10数%から20数%と極めて低い。これは大阪府や大阪市のように1975年まで男女の募集差別が存在していたことや、また、現在でも1次試験(筆記)と2次試験(面接)の合格者の男女比率に大きな隔たりをみせている自治体も存在している。さらには、家族的責任を担っている女性が出産、家族の介護など様々な困難に直面し退職を余儀なくされた結果も大きく影響している。

[III]昇進の実態

(1) 女性職員の最高到達職階

女性職員の到達している最高職階は、ほとんどの自治体で課長級又は課長代理(補佐)級である。吹田市と東大阪市では次長級の女性管理職(それぞれ2人)がいるが、それが今回の調査での最高到達である。なかには係長が最高到達という自治体もあり、差別の実態は歴然としている。

(2) 全職員に対する役職者比率の男女差

一部を除く自治体で男性職員の5〜6割が何らかの役職に就いているのに対して、女性の場合は役職者比率が6〜20%となっており、ここでも大きな格差がある。

(3) 女性の管理職の所属部局

現在、最高職階にある女性の所属する部局は、女性政策課など女性政策関連部局の他は福祉部局、市民課など市民と直接接する部局が多く、同じ部局内でも庶務、総務関係に配属されていることが多い。戝政・企画など自治体の総合的な政策決定、企画調整を担当する部局には全くと言っていいほど女性管理職はおらず、行政への女性の参画という点では問題が多い。

また、一部の自治体を除いて女性は主幹・主査などに就いている割合がたいへん多く、課長代理や係長など決済権をもつ役職に就くことは少ない。

[IV]ピンク・ゲットーの実態

(1) 保母の現状

堺市で保母職の女性が女性政策室長(部長級)まで昇格しているなど一部の例外はあるものの、大多数の自治体では課長代理(補佐)級に位置付けられている保育所長が最高到達職階となっている。保母職にとって課長代理(補佐)級以上に昇格する道は極めて狭いといえる。また、今なお男性事務職員が所長という市、1人で2〜3ヵ所の所長を兼務している市も存在する。ひとりの所長が管理する部下=保母の数は20数人が一般的であり、事務の同等級の管理職に比べ何倍も多く、等級に比して重い責任をおわされている。

(2) 看護婦の現状

堺・泉佐野で部長級まで到達しているほか、病院の総婦長が次長級という自治体は多い。しかし、看護婦総数に占める管理職の割合は極めて低く、多くても10数%に過ぎないことは事務職と同様である。また、次長級の総婦長が100人近くの部下をもつなど、保母職以上に等級に比べ重責を担っている実態がある。しかも三交替勤務という看護婦の実態を考慮すると、事務部門に比べ、極端に管理職の割合が少ないといえる。

[V]賃金格差

自治体職員の賃金制度は職務・職階給の性格を色濃くもっており、昇進しなければ賃金は上がらない側面が大きく男女の賃金格差は広がっている。

また、育児休暇や家族看護休暇を取得すれば昇給が延期されるというペナルティもあり、このペナルティは退職時まで解消されないなど賃金面での男女格差は数多く存在している。

[VI]おわりに

女性職員は研修や職場の会議から外されるなど、若いときから教育・訓練の機会が与えられないことが多い。昇任・昇格は研修を受ける機会の平等、職域拡大などとも大きなかかわりがある。これらについては今後のテーマとして詳しく調査、分析をすすめることにしたい。

また、各自治体に置かれている女性政策課などの女性政策関連の部局でも各自治体の行動計画・新国内行動計画に基づき、女性の政策決定への参加について現状をつかみ、「女子地方公務員の登用」を進めることを目指している。女性政策課等との連携をし、資料の提供についても協力を求めることも必要である。

昇任・昇格については女性に対する差別のみに留まらず、学歴差別、部局間差別、組合間差別など様々な差別が存在している。こうした差別の中のなかで女性への差別は最も見えやすい形で現れている。

どんな差別もない民主的な人事行政を実現させるための運動を進めることが必要である。

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