1988年7月 育児休業制度を全ての職場から 特集/婦人労働者の権利を守る

33年間の発言と退出 - 1988年7月 育児休業制度を全ての職場から 特集/婦人労働者の権利を守る

1988年7月 育児休業制度を全ての職場から 特集/婦人労働者の権利を守る

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33年間の発言と退出
執筆 : 
webmaster 2011-5-12 10:16

1988年7月
育児休業制度を全ての職場から
特集/婦人労働者の権利を守る(大阪府職労)


(労働運動1988年7月号)

大阪府職労婦人部では、育児要求の性格をめぐって活溌な討論を展開してきました。討論の到達として、すべての婦人に共通する母性保護要求と子どもをもつ労働者固有の直接の要求にねざす育児要求では、異なる性格をもっており、それまで「はたらく婦人の権利」として一括して扱っていた母性保護要求と育児要求との整理が必要ではないか、ということになりました。

要求を具体化する中で

このことは、ただ単に論議だけで到達したものではありません。母性保護を妊娠・出産にかかわる「母体保護」の範囲にとどめず、「思春期から更年期を含む」女性の一生ととらえた府職労母性保護講師団を中心とした教育・学習活動の推進、権利行使の運動、三交替制勤務という状況から地域保育所では解決できない看護婦の育児要求解決のための病院職場の職場保育所闘争など、運動や実践が討論に大きな役割を果たしたといえます。
このように、要求の性格を明らかにしたことは、たたかいの方向をも明確にすることにつながりました。

育児要求は、婦人の労働権保障と子どもの健やかな発達を保障することであり、はたらく婦人たちの、その形態は、「保育所に預けてはたらきたい」「集団保育で育てたい」「一定の期間は母乳で育てたい」「おばあちゃんに預けてはたらく」などさまざまです。こうした婦人たちの育児形態の選択にもとづき、要求も、保育所行政の充実(保育所増設、保育時間の延長、保育内容の改善、保育料の値上げ反対など)、育児時間の期間と時間の延長、育児休暇制度の実現、職場保育所の設置など、具体的となり、たたかう相手が明らかになります。そして、要求が具体化し組合員にわがりやすくなることによって、はたらく婦人のたたかうエネルギーをより引き出せる条件がつくられることは明らかです。

企業内闘争と法制定闘争

こうして討論の到達点をふまえた企業内のたたかいの結果、(1)病院の院内保育所の設置(三交替勤務では地域の保育所の保育時間では預けられない、勤務実態にあわないとの現状から病院職場保育所の設置の運動をすすめ組合員の運営による共同保育所――府当局も財政負担している共助会運営の保育所を経て1978年には、府直営――保母も正職員化を勝ちとり、すべての病院職場で院内保育所を実現)、(2)育児時間の期間と時間の延長(1982年生後1年3ヵ月まで1日90分の実現)、(3)育児休業の全職種適用と一時金の不合理是正(全職種適用は育児欠勤制度として1987年4月実現、一時金の不合理是正は制度として解決しないものの、当局負担で互助会の給付として6月は5000円、12月は1万円の支給を1980年から実施)――を勝ちとってきました。

これら育児要求にかかわる企業内闘争の前進は、保育行政の責任は国と自治体にあるとして地域でのたたかいを推進したこと、社会的条件が完備しない状況下で労働権確保のための使用者責任を追及するものとして企業内闘争と法制度制定闘争の位置づけを明確にしたことが、婦人の統一した力を引き出すとともに、男性組合員を含めた府職労全体の理解と団結を勝ちとったことにあったといえます。

要求を堅持することの大切さ

地方「行革」や労基法の改悪など厳しい状況のもとでは、要求はなかなか実現しません。しかし、組合員の全体の合意でかかげられた要求は堅持しなければなりません。府職労では「育児休業の全職種適用」の要求を育児休業法制定以後一貫してかかげたたかってきました。そして、その時点、その時点での獲得目標を明らかにしながら、組合員の切実な要求の実現にむけたたたかいを構築してきました。府職労のたたかいの経過をみると、育児休業法制定による自治体職場での条例化闘争では「法」よりも職種・職場を拡大させ、その後のたたかいでは1986年に研究会(当局と組合代表による構成)を設置させ、他府県や府下市町村の実態を調査するなど、要求実現にむけ足がかりをきづいてきました。

一方、婦人部では1971年から取り組んだ妊産婦の権利点検(妊娠、出産にかかわるすべての権利の行使実態の個人点検を個々面接で実施)に、条例制定(1976年4月)後は育児休暇の項を加え、婦人組合員の要求集約と育児休業対象職種の育児休業制度活用状況の把握を行なってきました。

要求の発展は情勢切り開く

育児要求は労働者の労働権確保と子どもの健やかな発達を願うという2つの性格をもっており、そのことから「子看休暇」(子どもの看護のための休暇)の要求が、討論のなかからでてきていました。府職労の婦人部では、1978年に「要求討議月間」を設定し、要求の集約、要求の整理、要求実現の方向、要求の到達と今後の課題などで大運動を提起し、母親の要求であった「子看休暇」を「家族看護休暇」要求に発展させ、全婦人組合員、ひいては男性を含む全組合員のものとしてきました。

この運動においても府職労は、2年ごとに実施している婦人部の権利点検実態調査で、年次有給休暇が家族の看護のために行使されている実態を把握するなど、実態調査の活動を重視してとりくみました。そして、1981年に家族看護欠勤制度を実現させました。この制度は、1暦年1回30日、やむをえない場合さらに1回30日、配偶者や同居の父母、子、祖父母を対象に看護のための欠勤が認められるもので、男女職員ともに適用されるものです(その後のたたかいで1984年に1回目を40日に、1985年には対象を別居の父母・子にも拡大)。

こうした家族看護欠勤制度の実現は企業内闘争のレベルではあるものの、労働者の労働権確保が労働者の当たり前の要求であるとする基盤をつくりだしたといえます。また、全国的な婦人労働者のたたかいのなかで、1985年に制定された「均等法」に、育児休業制度の普及が明記されたことも、「育児休業の全職種適用」の運動に大きな影響をあたえました。

婦人部はこの機をとらえて、全婦人組合員による「育児休業の全職種適用、一時金の不合理是正」をもとめる署名行動を展開し、府当局に「緊急要求書」とともに提出しました。そして、1986年の秋季年末関争で「育児欠勤」というかたちではあったものの、全職種の育児休業を実現しました。内容は、先に実現した「家族看護欠勤制度」の枠内で実施するとしたもので、(1)現行の育児休業法適用以外の職種に適用、(2)1987年4月1日から実施、(3)産休に引き続き70日以内の継続した期間(当初の申請を短縮することは可能)、(4)給与は減額、一時金・期末手当は全額支給、勤勉手当は基準日6ヵ月以内の勤務時間に応じて計算、(5)昇給取り扱いは私事の事故欠勤と同様の扱い、(6)共済掛け金は本人負担、(7)代替については産休代替に準ずる取り扱い――などとなっています。

府県レベルで突破口開く

大阪府における「育児欠勤制度」は、私たち婦人労働者の育児休暇要求にてらしてみると、(1)選択制についてはひき続き保育所行政の充実を追求していかなければならないが、現状としで選択を保障させた、(2)現職復帰は育児休業法の条例化にあたってもそのことを厳守させており、この制度においても厳守させた、(3)有給については、給与は無給でなく減額措置であり、一時金も支給されるというものになっており、育児休業法より前進させた、(4)代替は産休代替と同様の扱いとするもので、これは看護婦・施設保母・福祉事務所のケースワーカー・栄養士などは正職員による代替、それ以外は非常勤による代替を意味し、大阪府における育児休業法適用者と同レベルを確保した。――など、今後、“産休に引き続く70日間”という期間の延長を追求していかなければならないものの、全体として大きな成果だといえます。そして、自治体職場では府県職・政令都市職での全職種拡大の突破口を切り開いたものとなりました(その後、神奈川県、愛知県、兵庫県、神戸市などで実現)。

この成果は、労働権確保という要求の視点と育児休業制度をより良いものにしていくという運動を統一的に追求してきた結果です。

統一労組懇のたたかいと結合

以上のように、大阪府における育児要求の到達は、育児時間の期間と時間の延長、院内保育所の設置、育児休業の職種拡大、育児欠勤制度の実施など、大きな前進を勝ちとってきました。しかし同時に、企業内闘争の限界も明らかであり、ひき続き企業内闘争の運動強化と保育所行政切り捨ての軍拡・臨調路線、大企業本位の岸府政に反対するたたかいを強めていかなければなりません。

「連合」が提起している育児休業法制定の要求が、私たち婦人労働者の要求を引き下げたものであることは、本号の川口論文でも明らかにされているところです。

大阪府職労は、統一労組懇が提起している「婦人のはたらく権利をまもるための『保育・福祉の充実』と『育児休暇』『老人施設など公的福祉の拡充』『看護休暇』の制度化を求める清願」署名を積極的にとりくむにあたって、(1)育児休暇要求の私たちの要求を明らかにする、(2)育児要求解決の基本である保育所行政充実を求める運動を強化する、(3)「連合」の本質を明らかにする、(4)法制化闘争を、未組織労働者を含むすべての労働者の権利拡大をはかるものとする、企業内で勝ちとった既得権をより強固なものにしていく、との位置づけでとりくむことを明らかにしています。

法制化闘争はすべての婦人労働者が要求で一致し、団結してたたかえるものでなくてはなりません。「連合」が要求を引き下げたり、要求を欠落させたりするのかの本質を、運動のなかで明らかにすることが求められています。

私たちは、婦人の労働権確保―家族的責任の解決のために、社会的条件の整備と育児休暇、家族看護休暇の実現めざして、統一労組懇の提起する法制化のたたかいを企業内のたたかいと結合させ、学習活動を重視し、討議資料を作成して署名活動を積極的に展開しています。

(たけなか みちこ・大阪府職労婦人部長、なかい たづこ・同副部長)

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