参考文献
社会保障・社会福祉辞典
パンフ「老いも若きも」
大阪府衛生年報
大阪自治労連93春闘アンケート
西村震哉著「41才寿命説」
ILOは1984年に報告書「21世紀にむけての−社会保障の発展−経済、社会変革に対する社会保障制度への対応」で、『社会保障は家族の変化など新しいライフサイクルへの対応を準備すべきである』、『社会保障は男が男のために作ったもので、女性が社会で負っている責任についての認識がたりないという指摘がある、さらに新しいライフサイクルで生活しているものに対し、古くなってしまった道徳観念や扶養に対する考え方でペナルティを課すところがある』と指摘しています。
また、時代おくれの社会保障の特徴として
(1) 正常とはいわないまでも社会的に望ましい女性の役割は経済的に夫に依存し、有償労働に従事しない主婦であり母親である。
(2) 結婚は永続的なものである。
(3) 子供は結婚以外に産まれない。という3つの考えをあげている。
日本においても女性は、にこうした古い家族像とライフサイクルのうえにたった社会保障制度の下におかれているといえる。
さらに政府・財界はこうした時代おくれの社会保障制度の中に女性を押しとどめておくため第1に女性の賃金を極端に低くおさえ(20年ぶりに男性の半分以下の49.6%に)、はたらく女性の妊娠、出産、育児が労働生活に不利になる「母性差別」を拡大してきている。
第2には男女の役割分担の固定化と相次ぐ労基法の改悪による苛酷な労働条件を女性に押し付け、さらには保育料の値上げなど、女性がはたらき続けることへの支援策を以前に増して切り捨ててきており結果として「右あがりのM型雇用」を促進し、パート労働者の増大を図ってきている。
第3には税制度では配偶者控除を設け、社会保険料拠出を免除される妻の所得の上限を政策的に調整し、85年の第1次年金改悪のなかで主婦年金を創設し、働きつづける女性からは高い税と社会保険料を徴収する一方で年金給付を大幅にカトをするなどの女性労働政策と家庭政策を推し進め、女性の労働力を安価で切り捨て易い労働力としてこき使いながら、一方で女性を主婦にとどめおく戦略を推し進めています。
ところが、こうした中にあってもはたらく女性の増加、共働き世帯が非共働き世帯を上回る、出生率の低下、貧困な住宅政策のもと「家族の規模の縮小化、構成の単純化、直系家族から夫婦家族への移行、多就労化、家族機能の縮小・家族の解体の進行」と家族は変化してきています。
にもかかわらず、旧来の家族・親族関係を前提とした、社会保障・社会福祉施策は、はたらく女性を社会保障の枠外に追いやってきているのです。
そして、今回の年金制度の改悪は旧来の男女格差を温存し、全体の水準を引き下げるものではたらく女性にはダブルパンチの攻撃といえます。
いまもとめられているのは、社会環境、女性のライフサイクルの変化に対応した社会保障制度の改善こそもとめられています。
遺族年金の支給対象は上記表のようになっており、子のない55才未満の夫は所得に関係無く対象外となっている。
このように、ここでも働く女性の遺族年金は基礎部分でも厚生部分においても掛け捨て部分が男性より大きいという制度となっている。これは母子家庭、父子家庭の問題以前に男女が同じ保険料を払いながら、女性の場合は掛け捨て部分が多いという男女格差にほかならない。
所定内給与と年金額の男女比較 (単位:円)
91年調査では全国で共働き世帯が50.7%、非共働き世帯が49.7%となっており、共働き世帯が非共働きを1.0ポイント上回っている。大阪自治労連の93春闘アンケートではフルタイムの共働きで4ポイント、パートもふくめれば12.4ポイント共働き世帯が非共働き世帯を上回り、公務員職場では共働き世帯が多いことを示している。
厚生省のいう平均寿命とは、その年に生まれたゼロ歳児に先輩たちの年令別死亡率をあてはめ、彼らがその死亡率どうりに死んでいくと仮定した場合の平均生存年数(平均余命)のことである。
この平均寿命はゼロ歳児が先輩の死亡率どうり死んでいくことにかぎり意味があるのであって、そうならない場合を考慮していない。だが、今年生まれたゼロ歳児たちが明治や大正からの生き残りである老人や、物資が乏しかった時代を生き抜いてきた、昭和ヒトケタ世代の年輩者のように生き、そして死んでいくことはありえない。戦後とくに高度経済成長期以降の劇的な生存条件の変化(空気・水の汚染、農薬・食品添加物などによる重金属、化学物質の大量摂取、苛酷な労働による過労死の多発)を想定するとき、両者を同じものとして考えることがどれだけ無理なことかは、もはや言うまでもない。
年々変化する死亡の要因(環境と労働の影響)
(イ)41才寿命説から
1972年から10年間に死亡した大卒者3800人の平均寿命
年金パンフ「老いも若きも大変」では年金財源の確保として
(1) 不公平税制の是正で15兆3645億円
(2) 3万円の賃上げで 7兆5000億円
(3) 軍事費削減で 4兆6000億円
などをあげています。
この財源確保を女性の視点でみてみると男女の賃金格差を解消することによってもおおきな年金財源が確保できるのです。
男女の賃金格差は1975年を頂点にそれ以降年々格差が拡大してきており、1991年には20年ぶりに50%切ったという数字がでました。これは世界でも最低の水準でILOの報告でも韓国、キプロスと最下位を競っていると指摘されています。
こうした実態から男女の賃金格差の解消は上記賃上げ効果と同様の計算式でも下記のような財源が確保できることになります。
(1) 1975年水準の60%にもどすことで3兆円
(2) イギリス並の70%にひきあげることで6兆円
(3) フランス並の80%にひきあげることで9兆円
(4) 北欧並の90%にひきあげることで12兆円
(5) 男女同一賃金では15兆円となります。
ところが男女の賃金格差の解消はこれだけの効果だけでなく、格差の解消によってこれまで社会保険料を払っていなかった パート労働者が社会保険料を支払う効果(事業主負担分もそれに伴って増える)、一方で3号被保険者(主婦)の減など計算以上の効果をうむことも明らかです。