1993年9月 第3回全国地方自治研究集会レポート

33年間の発言と退出 - 1993年9月 第3回全国地方自治研究集会レポート

1993年9月 第3回全国地方自治研究集会レポート

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33年間の発言と退出
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webmaster 2011-6-1 16:29

1993年9月
第3回全国地方自治研究集会レポート

 大阪府における技術系職員(建築職)の昇任差別の実態と民主的昇格をもとめるたたかい

財界の利益を優先する岸・中川府政のもと大阪府の建設行政は関西新空港の建設新庁舎の建設をはじめとした大型プロジェクトが推進され住宅・一般建築行政がなおざりにされる傾向がつよまっており、住民本位の建築・住宅行政の縮小、民活路線による出向職員の増大など、建築職をとりまく環境は大きく変化し、団塊の世代が40代半ばに達するなかで民主的昇任の実現はは組合員・職員にとって切実な要求となってきている。

土建支部は(土木部本庁、建築部、企業局)をかかえる組織であり土建支部エリアにおける職員数は約1300名そのうち800名が技術系職員でありその職種は10をこえているが、建築職は約400名となっている。

【1】府職労がとりくみ当局に認めさせた「7つの格差」

府職労はいわゆる 「7つの格差」を府当局にみとめさせている。
それは(1)同一採用条件下での格差
    (2)採用年度による格差
    (3)学歴による格差
    (4)職種間の格差
    (5)部局間、本庁、出先の格差
    (6)男女の格差
    (7)組合活動家に対する差別

そのなかでも土建支部でとりわけ顕著になっているのが(1)職種間格差と(2)部局間格差(3)男女間格差(4)組合活動家にたいする差別である。同時にこれらが複合的にあらわれ極端な格差となっている事例が多く存在する。
「格差」=(差別)は当局の人事・労務管理の結果であり基本的には職場や行政の民主化なくしては解決できない課題である。
しかし、現状の差別撤廃の粘り強いたたかいなくして根本的原因の撤廃につながらないこともまたあきらかである。

【2】大阪府建築部における技術系職員のおかれている実態

1)団塊の世代と臨調・行革

1980年代から始まった臨調・行革は職員定数の削減・抑制をその大きな柱としました。は大阪府における10年間の建築職の採用の状況です。極端な年には初級が0という状況となっています。(図−1)
また、1986年と1990年の建築部における技術系職員(建築・土木・電気・機械職等)の年齢別構成と係長級以上の職階の占める蚊数を示したものです。
ここに端的に現れているのは団塊の世代が多いということだけでなく、それ以降の世代が極端に少なく当局のいうポスト論との関係からも団塊の世代は2重の皺寄せに直面している。(図−2)

2)技術系職員のポスト数の変化

大阪府当局は府職労の昇任・昇格問題にかかる府職労要求に対し「団塊の世代対策として、一般行政職の係長級試験において2類B区分を設け合格者を増加した。技術職においても同様の趣旨で昇任管理を行っている」と回答しています。ところが試験制度のない技術系職員のポスト増要求には、「組織の必要性、能力の実証士気の高揚」などの一般論に終始し、なんら具体策を明らかに出来ずにいる。
技術系職員の昇任問題の土建支部の追及に対し当局は口を開けば「ポストを増やしている」といいます。問題はどの職階でポストが増やされてきたかということです。
団塊の世代といわれる1947年〜1950年生まれの職員採用がほぼ終わった年の1973年と、その人達が40代になった年の1992年との20年を経た時点での建築部における技術系職員の数は、379人から442人と1.17倍になっています。ポスト数は1.64倍と増えてはいますが、その内容は課長級以上で4.12倍、主幹・主査級では1.43倍と極端なものとなっています。(表−1)(図−3)
こうした、実態は団塊の世代の”仕事への意欲を”もたらすものになっていないことは明らかであり、 まさに、技術系職員への具体的対策の実施の当局責任が問われている。

3)ポスト確保に名をかりた市町村への出向と民活路線による外郭団体、第3セクターへの出向の増大

土建支部職場における出向は1988年度で約200名にのぼっており、この10年間増える傾向にある。

これは10年前と比較すると約2倍である。 増加の背景・原因は

(1) 臨調・地方「行革」による定員抑制、民活路線のもとでの外郭団体の増加。そして「肩代わり出向」といわれる府の業務を外郭団体に委託しその業務を執行するために府の職員を出向させるという事態が多く存在している。
(2) 市町村への出向の増加は市町村行政への支配強化につながるおそれもつよい。
(3) 第3セクターへの出向はまさに民活路線の推進そのものである。

こうした行政的背景が「ポスト」の拡大という現象面が強く打ち出されているなかで複雑な問題を内包しているといわざるを得ない。

4)本家主義といわれる前近代的人事管理の実態

府当局も認めている「7つの格差」のなかでも技術系職員にとりわけ顕在化している「部局間、本庁出先間の格差と職種間格差」をつくりだしている要因の一つが『本家主義』といわれる前近代的な人事管理の現実です。
『本家主義』とは職種毎に『本家』といわれる「部局」が存在し、『本家』以外の部局に配属されると「昇任時の評価」で的確な評価をうけられないとか、配置された所属において昇任の所属長推薦があっても、『本家』がそれに「横ヤリ」をいれるといわれているものです。

また、逆に『本家』以外の部局では、異動に際し『本家主義』を逆用し、所属長責任を回避する実態も報告されています。

(1) −ポストもなく本家の目の届かないところで15年以上の実態が−
『本家主義』の弊害は『本家』以外の部局での在職期間の長さが、昇任に大きな不利益をもたらすことです。『本家』以外では1人職種もめずらしくなく、その職種に対応するポストすら存在しません。あっても『本家』部局とは比較にならないくらい少ないのが現状です。
ましてや『本家』部局では3〜5年での異動サイクルが『本家』以外では20年も同じという実態すら存在します。(図−4)
こうした、当局の“イビツ”な人事管理の責任もさることながら、様々な条件に遭遇せざるを得ない技術系職員にとっての「昇任問題」の具体的解決策がとられず、ましてや前近代的『本家主義』のなかで「能力の実証、組織の必要性」ばかりが強調され、職員の「はたらく意欲」は後方に追いやられている府当局の「昇任問題」姿勢こそ改めるべき時期にきています。

【3】土建支部におけるたたかいと成果

土建支部では技術系職員の民主的昇任の実現をめざし、毎年の支部要求で当局の責任を追及し、いくつかの成果をあげてきています。

(1) 支部要求の内容

1992年11月16日

建築部長
原田  明治  殿

大阪府職員労働組合土建支部
支部長 大宮 英雄

民主的行政運営と、職員が意欲をもって
住民本位の土木・建築行政を遂行できるよう
技術職員の昇任における格差を解消し、
民主的昇任の実施をもとめる申し入れ

支部では、毎年支部・分会統一要求書において技術系・専門職員の昇任について、(1)いわゆる7つの格差を是正すること(2)組合への所属、所属組合の違いによる差別をしないこと等の要求をしてきている。これに対し3部局回答では、「組合差別はしていない、指摘の点も考慮する」としながらも、依然として格差は是正されているとはいえない実態である。技術・専門職員に対する、公正で民主的な昇任は、民主的な行政運営にとっては欠かすことのできない問題であり、すべての職員が意欲をもって府民本位の行政を遂行するうえでも重要な課題である。

来年度の昇任選考時期にあたり、下記の項目について誠意をもって実行するよう強く申し入れるものである。

1.組合所属、組合加入・未加入による差別は行わないこと。また、昇任を理由に脱退工作は絶対に行わないことを再確認すること。
2.昇任における「7つの格差」をなくすこと。
3.所属長推薦の基準を明らかにすること。
4.昇任選考にあたっての適正評価基準、経歴評価基準を明らかにすること。
5.枠の拡大など″団塊の世代″に対する特別の対策を講じること。
6.とりわけ、46才以上の技術・専門職員をすべて昇任させること。
 

以上

(2) 支部ニュースによるキャンペーンの実施

昇任問題が具体的に動き出す1月から支部ニュースによるキャンペーンを開始し適性評価、経歴評価における当局の秘密主義をはじめ実態や問題点を明らかにしてきた。

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