1996年5月 県職部会「賃金・権利討論集会」報告 女性の賃金格差解消のとりくみ

33年間の発言と退出 - 1996年5月 県職部会「賃金・権利討論集会」報告 女性の賃金格差解消のとりくみ

1996年5月 県職部会「賃金・権利討論集会」報告 女性の賃金格差解消のとりくみ

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33年間の発言と退出
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webmaster 2011-6-9 11:40

1996年5月
県職部会「賃金・権利討論集会」報告
女性の賃金格差解消のとりくみ

1.女性の賃金格差の原因

【日本における男女賃金格差の経緯】

<1> 日本の男女賃金格差は、韓国・キプロスと最下位を争っており、発達した資本主義国では最低となっています。
<2> 1975年の国際婦人年以降、世界では男女の賃金格差が縮小してきています。ところが日本では、戦後格差が順次縮小してきたものの、1976年の56.1(毎月勤労統計)を境に格差が拡大してきており、1991年には、49.6と20年ぶりに男性の半分以下の水準に落ち込みました。
<3> 均等法制定直後の1986年には、拡大傾向にストップをかけたものの2年と続かず1988年からまたもや格差が拡大しまし、世界の流れに逆行する方向をたどってきています。

【日本の男女賃金格差の要因】

<1> 1976年からの春闘の連敗によって、賃金の大幅底上げがなされなかったこと。
<2> コース別人事、職務・職階給の導入による、昇任・昇格差別など男女差別の固定化。 
<3> 低賃金・無権利のパート労働者の増大(10年間で2倍の800万人に)
<4> 母性保護の権利、家族的責任にかかわる諸権利の取得による賃金カット、昇給延伸など、賃金上昇に大きく立ちはだかっている権利闘争の弱点。
<5> 女性が多くを占める医療・福祉職場においては臨調・行革攻撃の下、低賃金・劣悪な労働条件に拍車をかけられ、勤続年数が極端に短いこと。
があげられます。

2.自治体労働者・労働組合の賃金・権利闘争の前進をめざして

【公務員賃金をめぐって】

(1)公務員賃金制度の主な変遷(その1)

<1> 1945年(S20)8月〜1957年(S32)3月
  ・1946年(S21)10月 ・・・電産型賃金(生計費基本)
  ・1947年(S22)     2・1スト
  ・1947年(S22)10月〜12月    1800円ベース(業種別平均賃金)
  ・1948年(S23)1 月〜5 月    2900円ベース (2500円生活給、420円職階給)
  ・1948年7月22日        マッカーサー書簡 
  ・1948年7月31日   政令201号(スト権剥奪−団結権・交渉権制限)
  ・1948年12月            国家公務員法改悪   人事院の発足  

<2> 1957年(S32)4月 給料表分断、通し号俸制廃止   8級制導入

<3> 1985年(S60)4月   11級制導入

 (2) 人事院勧告制度をめぐって

<1> 労働三権の剥奪・制限の代償措置という装いをもったもの=代償措置でない
  ・代償措置論=政府・当局・人事院・連合・自治労・連合公務員共闘の主張

<2> 大幅賃上げとは程遠い「格差是正機関化」(公・民格差)(参考-地方公務員法第24条3項-給与決定の4原則からも逸脱)

<3>「民間準拠」論を展開

<4> 人勧制度のはたしている役割(公務員労働者・労働組合に対する権利侵害。我国の「低賃金構造」の主要な柱のひとつ)
  ・スト権奪還、労働基本権奪還闘争の重要性→国民の民主的権利擁護のたたかいと結合

<5>「人勧で賃金がきまる」という論について
◆人勧で実施時期すら示さなかったときがある◆実施時期を明記した人勧も、4月実施に10年かかった◆72年4月実施以降も「82年人勧凍結」83年、84年、85年人勧値切りを強行(83年人勧6.47%→2.03、84年人勧6.44%→3.34%、85年人勧4月実施→7月実施)◆62年第3次賃金闘争で国会修正◆人勧制度を過大評価・過小評価するという両極の誤りに陥ってはならない。

(3) 80〜90年代人事院勧告の特徴(賃金制度の変遷その2)

<1> 80年3月16日  第2臨調発足(自治労丸山委員長委員として参加)
《8月人勧》 (人事管理・人事行政施策について長期的安定的な政策策定へ公務員制度の全面的見直し=賃金制度の全般的・総合的な検討)    

<2> 82年7月30日  第2臨調行政改革に関する第3次答申(基本答申) 公務能率の増進・成績主義を打ち出す(特昇制度・勤勉手当制度を本来の趣旨にそった運用の確立)
【注−特昇制度=15%   82年12+3% 85年10+5%  に所属長枠を拡大】 

<3> 85年 11級制導入  (1957年(S22)以来28年ぶりの制度改悪)
      △85年を境に民間企業=職務・職階給与→能力・能率給拡大・生活給縮小へ

<4> 87年<人勧>  民間企業の経営努力を指摘 (解雇、1時帰休、賃金カット、配転、出向、残業規制)

<5> 88年6月24日 人事院総裁の私的諮問機関「勤務時間問題研究会」が「公務務員の勤務制度の課題」として中間報告(連合総研佐々木氏参加)
<8月人勧>   「週休2日制」の報告と勧告(報告で勤務時間の弾力化への取り組みを指摘)
89年12月11日  同研究会本報告(93人勧にある介護休暇もこの時点で無給休暇の新設 提起−高齢者社会、核家族化に対応)

<6> 89年<人勧>  
調整手当改悪(6月第3次案)90年4月実施   勤務時間の適正化、弾力化。「公務員倫理の高揚」をとりあげる。民間企業の経営努力にならった「公務運営の改革(公務員制度・給与制度の成績主義の強調)←管理の強化

<7> 90年<人勧>  
係長級以上4.91%、その他3.67%アップ、一時金の差別支給。「公務運営の改善」指摘=能率化・服務規律の確保・公務員倫理の高揚   

<8> 91年<人勧> 
差別・成績主義の賃金体系   本庁課長補佐に新たに「俸給の調整額8%」新設、俸給の特別調整額を受ける職員の週休日等の勤務について  
「管理職員特別勤務手当」新設、勤務時間の弾力化への検討へ

<9> 92年<人勧>  
調整手当改悪、フレックスタイム導入、高齢対策提起

<10> 93年<人勧> 
超低額・一時金削減、介護休暇(無給)、高齢対策 「勤務時間法」整備へ

(4) 人勧・人事院規則と女性の権利

・労基法の改悪
86年4月1日以降(女子保護規定緩和−時間外・深夜・危険有害業務、生理休暇−保護なし平等)    
88年4月1日以降(1日8時間労働の原則をくずす−変形労働の拡大、労働時間の弾力化)
93年6月(94年4月実施)週休2日に相当する週40時間−1年単位の変形労働割増賃金率の改訂、44時間〜48時間制容認(政令へ委任)

・人事院規則
1976年  3職種育児休業法制定に伴って、人事院規則に無給の「休業」という概念が入る−無給と一時金の不合理
1986年 労基法改悪を根拠に生理休暇を特別休暇から削除
1990年  育児休業法関連
1994年  勤務時間法(介護休業制度)(育児休業との矛盾)

3.「均等法」と日本シェーリング最高裁判決

均等法の基本−
母性保護の適用を受けた者と受けなかった者との間に昇任・昇格等に当たって取り扱いに差が生じる問題については、当面法律による一律規制の対象とはしない(1983年12月21日婦少審労使合意)

日本シェーリング賃金差別事件−
(1981年大阪地裁、1983年高裁、1989年12月24日最高裁判決)
年休・生休・産休・育児時間等労基法・労組法上の権利行使による不就労を理由に賃金査定の基礎としたことは無効

4.国際的到達に学ぶ

(1) 北京女性会議行動綱領

戦略目標178(h)−「団体交渉は権利であると同時に、女性に対する賃金の不平等を撤廃し、労働条件を改善するための重要な仕組みであると認識すること。」

(2) ILO132号条約

第5条4 疾病、傷害、出産等の当該被用者にとってやむえない理由に欠勤は、各国の権限ある機関により又は適当な機関を通じて決定される条件の下で、勤務期間の1部として数えられる。
第6条2 疾病又は傷害に起因する労働不能の期間は、各国の権限ある機関又は適当な機関を通じて決定される条件の下で第3条3に定める最低年次有給休暇の一部として数えてはならない。

5.大阪府職労のたたかいの経験からの教訓

(1) 自治体職場(県職レベル)における男女賃金各差の要因とのたたかい

A.昇任  
B.無給化攻撃と昇給延伸  
C.昇格基準と権利の行使

<1> 昇任差別に対する取り組みの強化 
7つの格差−男女・学歴・採用年度・職種間・本庁、出先・部局間・労働組合

<2> 権利と賃金は一体のものとしてとらえる(連合との違い)
 (たたかいの結果として「権利(休暇)」が先行する場合もあるが、賃金要求は絶対に離さない)
・育児休業の一時金の不合理是正と有給要求(育児欠勤制度)・

<3> 女性の権利要求を他の権利要求とくらべ特別視しない。過渡的要求と全労働者的課題
・休暇要求だけでない労働権保障の条件整備(家政婦利用補助金)

<4> 賃金制度に熟知し、他の制度との極端な不合理を許さない。

<5> 人事院勧告体制と真正面から対決するたたかいの発展をめざす
・労働基準法が大部分適用であると認識した運動の展開(勤務時間法による準則攻撃)

<6> 賃金の基本をふまえ、生活実態にねざした賃上げ要求を掲げ、たたかいを推進する。
    (生計費を基本とした基本給のひきあげと手当の性格を整理する)
・無給攻撃とのたたかい・有給要求への確信(イデオロギー攻撃とのたたかい)

<7> 組織の総力をあげてたたかいの課題とする

<8> 職場における憲法・労基法違反などの解消をめざし総合的な権利点検運動を推進する

<9> 全国的、地域的共闘の強化とたたかう方針の確立 

<10> 分断を許さない(男・女、官・民、官・官等)

6.たたかいの課題

(1) 人事院勧告体制と真正面から対決するたたかいの発展をめざす

賃金闘争と権利奪還闘争の区別と関連をふ まえ各々のたたかいを独自に発展させる。
さらには、経済闘争と政治闘争との結合をはかりたたかいを前進させる。

(2) 賃金闘争の具体化

<1> 賃金の基本をふまえ、生活実態にねざした賃上げ要求を掲げ、たたかいを推進する。
(生計費を基本とした基本給のひきあげと手当の性格を整理する)

<2> 春闘に最大の力を集中し、国民春闘推進、管理春闘打破。
当局に対するたたかいでは「有額回答」をもとめていく。

<3> 人事院・人事委員会に対するたたかいが重要。(全国的、地域的共闘の強化)

<4> 自治体労働者の賃金確定まで見通した賃金闘争の確立。

イ)勧告前のたたかい
ロ)勧告後のたたかい(1962年の経験を活かす) −勧告に対する怒りと要求の再結集
ハ)自治体における確定のたたかい
ニ)一時金闘争の全国的再構築

<5> 当面賃金闘争を通じて、労働基本権奪還にむけた権利意識とたたかいの高揚

(3) 権利奪還闘争の具体化

<1> 現行公務員法に定める労働基本権剥奪・制限は憲法違反であることを明確にする

<2> 従って権利回復の柱を明確に位置付け、国民の民主的権利擁護のたたかいと共に推進する。−小選挙区制の廃止、金権腐敗の一掃、憲法改悪反対。年金・医療・福祉・教育の切り捨て反対、軍事費の削減など労働者国民の生活と権利擁護のたたかいを推進する−

<3> 民主的行政の確立、民主的自治体建設をめざし住民と共同してたたかう

<4> 職場における憲法・労基法違反などの解消をめざし総合的な権利点検運動を推進する 

<5> ストライキ権奪還を含む立法措置要求を つくりあげる。
立法措置の検討にあたっては1980年に日本共産党が発表した「官公労働法」構想を参考とするまた、立法措置の中でILO151号条約に定める便宜供与(第6条)を法的に明確にする。ストライキ権を含め労働基本権の完全回復を明確にしないまま連合・自治労・公務員共闘のようにILO151条約批准を要求することは、ストライキ権回復を「究極目標」にすることになり、まさに「交渉権」をという形で紛れもない「段階論」となる。 また、立法案の中で、人事院・人事委員会を改組、縮小をはかる。公務員の身分保障・懲戒等の定めについても憲法15条、28条、92条をふまえて具体化する。
△賃金闘争の連続で労働基本権奪還は実現しない(権利闘争としての具体化が必要)

(4)「民間準拠」について

△93年人勧報告で「民間準拠」について…「既に定着したもの」とまで言い切っている

<1> 金額での公民格差だけでなく、民間における経営努力−
    −成績主義、能率主義、人事管理の強化、給与制度そのものへ−

<2> 賃金面では民間における職務・職階給制度強化から
→能力給・能率給へ移行の対応(春闘敗北の連続←管理春闘) 

【参考】連合第3回定期大会(1993.10.7〜8)(資料−17)
  「中期賃金政策」=年2.5%引き上げ、完全仕事給、熟練度別賃金要求への移行を決定

(5) 人事院勧告体制への「参加・協力」にふみだした連合・自治労・公務員共闘

1)人勧体制への「積極的協力」宣言

<1> これまでの人勧「賃金闘争」の致命的欠陥
<2>“参加”の名による人事院勧告体制への全面屈服

2)労使対等による労働条件決定の原則を否定し、「賃金闘争」の放棄

3)労働基本権奪還闘争の完全放棄と「参加・改革」要求へ

4)賃金闘争と人勧体制翼賛運動へと堕落させる「年間闘争サイクル再整理」論を展開

5)公務員賃金闘争の終焉をもたらす連合・自治労・公務員共闘

(6) 賃金要求の原則

  <1> 生活保障(含む最低賃金制要求)
  <2> 同一労働・同一賃金
  <3> 差別・格差解消

(7) 地方公務員の賃金闘争

△各自治体当局と関係労働組合との交渉による決定が原則
△民主的自治体建設をめざし地域住民・民主勢力と共に日常的たたかいを前進させる住民共闘と地域共闘の重要性
△人事委員会のある都道府県・政令都市、公平委員会のみの自治体
−労働条件決定に至る仕組みの違いに留意したたかいを組織する 

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