1978年3月 国際婦人年「国内行動計画」の民主的実施にむけて

33年間の発言と退出 - 1978年3月 国際婦人年「国内行動計画」の民主的実施にむけて

1978年3月 国際婦人年「国内行動計画」の民主的実施にむけて

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33年間の発言と退出
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webmaster 2011-4-12 17:43

1978年3月
国際婦人年
「国内行動計画」の民主的実施にむけて


(労働運動1978年3月号)

私たち大阪府職労婦人部は、婦人労働者として、また自治体行政の担い手として「大阪府行動計画策定に対する私たちの提言づくり――婦人の地位向上にむけて府行政のはたすべき役割」というとりくみを婦人部活動の重要な柱に位置づけ、運動をすすめている。
 この活動は、今、府下の婦人から大きな期待と関心がよせられてきている。

【1】運動の出発点

1.運動方向の模索

 大阪においても国際婦人年大阪準備会が結成され、「大阪大空襲30年追悼会」「婦人の公害展」「はたらく婦人のシンポジュウム」がとりくまれ、多くの婦人がこの行動に参加した。

 1976年は、婦人問題企画推進会議の中間意見と国内行動計画概案が発表され、はたらく婦人の中央集会での要請決議をはじめとして多くの団体が政府にたいし、国内行動計画の早期策定と婦人の切実な要求の実現を、国内行動計画において具体化することを強く申し入れた。こうしたなかで府職労婦人部としても自治労に意見を反映するなかで、この年の8月に自治労大阪府本婦人部として(国と大阪府、さらに大阪府市長会(府下衛星都市首長の連絡協議会)にたいし要求書を提出した。

 その内容は、保育行政の充実をはじめとした、福祉行政の向上と自治体労働者の労働条件改善が主なものであった。とくに、大阪府には、婦人問題の行政としての総括窓口の設置を強く要請した(その後府議会における婦人議員の活躍もあり12月に婦人対策室設置にむけての担当部門――専任職員2名配置の実現をみた)。

 府行動計画提言活動の下地をつくったものとして2つのとりくみをあげることができる。

 その第1は、府職労婦人部は毎年婦人活動家(支部婦人部役員の層)を対象とし婦人労働学校を開催しているが、この年の10月の婦人労働学校では、「パネルディスカッション――革新自治体下における婦人部活動」(東京都職労、神奈川県職労、横浜市従、京都府職労、神戸市職労、大阪府職労の各婦人がパネラーとして参加)が企画され、東京都職労の「都民との対話集会」、京都府職労の地域活動、神奈川県職労の行財政のとりくみの経験が府職労婦人部運動に大きな視野と豊富な活動展開を示唆したともいえる。

 第2にあげられるのは、1976年8月に活動をはじめた統一戦線促進大阪労働組合懇談会婦人代表者会議(略称 ―― 統一労組懇婦人代表者会議 ―― 統一労組懇に結集する労組の婦人の交流の場)における討論と交流である。 この会議で、単組ではなかなかとりくみえない課題についての討論がおこなわれ、交流が深められていたが、みんなが関心をもちながらも手がつけられなかった、世界行動計画やベルリン大会のアピール、ILO60回総会の活動計画について、民間の婦人労働者も含めた討論や検討が行なわれ、このことが自治体労働者の任務をより鮮明にしたといえる。

2.世界行動計画の学習

 世界行動計画は、国連憲章、世界人権宣言、婦人にたいする差別撤廃宣言にうたわれた平和への追求、基本的人権と人間尊厳の侵されざる権利、男女同権の基本的理念を再確認し、過去30年間にわたる植民地支配からの解放、民族独立のたたかいをはじめ、婦人の地位向上、男女差別解消をめざしたさまざまな国際的とりきめや、各国における婦人運動の成果を大きく評価している。

 しかし、一方では、婦人をとりまく現状がまだまだ多くの困難と問題をかかえていることを指摘し、婦人の地位向上にむけては総合的で具体的な計画と戦略が重要であるとしている。

 そして、婦人が真の、かつ完全な意味で経済的、社会的、政治的生活に参加できる社会概念を定め、社会がそのように発展していくために法・制度上の整備、社会・経済構造上の問題の解決を政府の責任としており、1976年から1985年の10年間に具体的目標を定めその推進を求めている。

 学習のなかでこれら世界行動計画の基本理念とその方向を正しく理解したことが、府職労婦人部の運動をすすめるにあたって重要な意味をもったといえる。

3.政府の「国内行動計画」をどうとらえるのか

 府職労婦人部は世界行動計画の学習から、政府の「国内行動計画」にたいする見解については、今日までの婦人運動や世界行動計画が主張しているのところの国内行動計画の重要性をふまえた十分な討論のすえ、一部で言われているような「国内行動計画粉砕」「体制的合理化の一環である」といった立場に陥いることなく、次のような立場を確立した。

 国内行動計画は、本来世界会議で採択された世界行動計画やILO第60回総会決議、活動計画、宣言等に基づいて作成されるべきものである。

 また、「婦人に対しておこなわれている法制上の特別措置についてもその合理的範囲を検討し、科学的根拠が認められず男女平等の支障となるものの解消をはかる」としており、「保護ぬき平等論」に同調し、労基法改悪の危惧を含んだ内容となっており、こうした危険な方向を見のがすことはできない。

 したがって、国内行動の婦人の十年を私たちの運動で、婦人の平等要求の前進を勝ちとっていくという運動方向をもち、政府の「国内行動計画」の限界性と意義を正しくとらえて運動をすすめることが重要である(国内行動計画に対するとりくみをすすめるにあたっての府職労婦人部の基本的立場――常任委員会見解)

【2】府行動計画策定にたいする提言づくり

 世界行動計画は、勧告の対象を「第1義に各国政府、そしてすべての公的機関、及び民間の機関、婦人団体、青年団体、使用者、労働組合、マスコミ、非政府機関、政党およぴその他のグループ」(世界行動計画第1章27)としている。

 これをうけて府職労婦人部の運動方向として、「世界行動計画を指針としながら、婦人自らの手で政府の果すべき責任と「国内行動計画」の見直しを追及していきます。そして、公的機関としての大阪府の果すべき責任を明確にし、府行動計画の策定を要求していくと同時に、自治体に働く婦人労働者の立場から、府行政を見直すなかで府行動計画策定にむけて積極的に提言をおこなっていきます」(常任委員会見解)とし、この提言づくりの活動を府職労婦人部活動の位置づけとして次の点をあげている。

1.婦人部自治研活動の一環である。

 自治体労働者は、自らの労働者としての要求とともに、住民要求をも統一的に実現していく任務があります。府行動計画提言活動はまさにこの視点の活動であり、府下の各層の婦人の要求を施策化し、実現していくとりくみであり、婦人部自治研活動の重要な柱となるとりくみです。

2.府職労行財政点検活動の一環である。

 府職労は、近年の地方財政危機の打開をめざし、府行財政の民主的、効率的運動にむけて行財政点検活動を活発に行なっていますが、府行動計画提言活動は、婦人組合員自らが、婦人に関する行財政を見直し、点検し、住民本位(婦人の地位向上にむけて)の民主的、効率的な行財政を確立していく運動です。

3.第3期黒田革新府政の婦人の政策づくりの一環である。

 革新府政下の自治体労働者として私たちは、第3期黒田革新府政実現のため大きな役割を果たさねばなりません。

 したがって、直接行政を担っている私たちが第3期黒田革新府政の婦人政策をつくっていかなければなりません。府行動計画提言活動こそ、まさにその基礎となる活動です。

4.すべての婦人とともにたたかう婦人運動の一環である。

 府行動計画提言活動は、府行動計画策定を要求すると同時に、婦人の平等要求実現にむけて、国に対する婦人政策、労働政策の変革をせまるたたかいであり、未組織労働者や地域の婦人とともに、婦人の解放をねがう大きな統一行動であり、婦人労働者としての課題です(1978年度府職労婦人部方針)。

 この観点でとりくんだ提言活動は、婦人自らの手によって「農家婦人の現況」「母子福祉」「職業訓練、雇用対策、労働者福祉の現況と問題点」「婦人と生活環境」など12の分野にわたり、大阪における婦人の現状と課題――提言第1次案として170ページにおよぶ冊子にまとめられた。

 この活動をすすめるにあたって当初婦人部役員の受けとめ方は「婦人だけでこんなことできるんやろか」「どうまとめたらええかわからへん」などといった消極的な意見から、「一定の文章なら役員クラスでまとめることできるけど全組合員のものにするのはしんどい」といった様々な意見が婦人部長会議でだされていた。

 これをうけた常任委員会は、常任委員がまず自分の仕事を通じた提言のたたき台をつくりあげ、それにそくして各支部にテーマを提起し、支部ごとに学習会を組織し、婦人部の運動方向を説明した。

 こうしたなかで、支部においては全婦人組合員を対象としたアンケートの実施など創意的活動がとりくまれるなかで中間集約の婦人部長会議ではそれぞれが支部のとりくみ、現状を生き生きと報告するようになった。

 そして第1次案をもとに府下70余の団体に呼びかけて「府民との対話集会」を開催し、府民との交流、討論をした。

 この集会では、「府下の農村婦人の現状がこのように全般的にとりまとめ分析されたものは行改も含め過去になかったのではないか、読んでいくなかで涙がとまらなかった」(新婦人)、「婦人と生活環境のなかに公営住宅の入居基準の問題が指摘されているが、私たちもこの問題について府にも要請してきたが、建築行政に婦人がかかわってこういう問題意識をもっておられることは心強い」(独身婦人連盟)、「業者婦人の問題があまりとりあげられていないが、農家婦人とにかよった現状にある商工部に働くみなさんとともに運動をすすめていきたい」(大商連)など多くの意見がだされた。

 この府民の積極的な意見は、この活動にとりくんだ婦人に大きな確信を与えるとともに府民とともに前進することの重要性を実践的に学んだといえる。

【3】現時点における総括

 府職労婦人部は、提言第1次案作成から府民との対話集会までの運動の総括を次のようにあげている。

1.自治体労働者の任務を果たしうる婦人部活動を展開することができ、婦人部自治研活動の基礎を築くことができました。

2.「生きがいのある仕事」「働きがいのある職場」への展望を示すことができ婦人部活動の質的、量的強化を勝ちとることができました。

3.第3期革新府政の婦人の政策づくりの基礎を提起することができました。

4.府民との対話集会を初めて開催し、今後の婦人分野での共闘の基礎を築くことができました。

5.しかし、全体として行政の現状にたいする問題点の指摘、現状の把握にとどまっており、現状の組織機構の矛盾や不合理、国と自治体の行財政制度上のしくみや問題点など当局との交渉による提言の具体的実践と併せてまだまだ不十分な点を多く残しています。これらの弱点を克服し、府行動計画提言活動の目的を達成するため引き続き運動を強めなければなりません。

としており、この活動を重視するなかで婦人部活動の質的発展をめざしている。こうした運動方向にたいし、自治体労働組合運動のなかでは「自らの要求を解決することなしに、住民共闘などナンセンス、まず労働条件の改善を勝ちとることが大切だ」との意見が一部に存在しているが、府職労婦人部はこの1年間の独自要求のたたかいのなかで、病院職場保育所の直営化、風しん抗体検査をうけるための職免の実施、乳ガン、子宮ガン検診実施の確約など自らの労働条件改善を勝ちとってきている。

 住民本位の行政を確立することは、そこに働く自治体労働者の労働条件の改善と不可分であり、このことを統一的に追求してこそ自治体労働者の要求が前進することを実践的に明らかにしたといえるだろう。

【4】平等要求実現にむけてのたたかい

深刻な不況とインフレが続き、雇用不安、「合理化」が進行するなかで婦人労働政策も「婦人の能力開発」「保護よりも平等を」といった巧妙な分断攻撃がもちこまれ、男女格差のみならず婦人の間にも格差が広がっているといわれる現状のなかで、77年度『婦人労働の実情』によると雇用婦人労働者は1203万となり今日までの最高を示している。

このことは、現在の経済状況のもとで働かざるをえない婦人の増加、「合理化」攻撃で不安定雇用の婦人が増加の1途をたどっていることを物語っているといえる。婦人の労働権を確立し、真の男女平等を実現するには、さらに大きな運動の展開がもとめられていると考える。府職労婦人部の提言活動の経験は、企業内のたたかいにとどまることなく、住民とともに前進する自治体労働者の任務を果たしただけでなく、婦人労働者の「働きがいのある仕事をしたい」という平等要求にこたえた点で重要であった。

また、ここ数年来重視され運動が発展している自治研活動にたいし、世界行動計画という絶好の課題があったこともさることながら「婦人の地位向上にむけて自治体行政の果たすべき役割」といった、今まで見過ごしかねなかった視点を提起しえたことは、今後の自治体労働組合の婦人部運動に新たな発展方向として受けとめられるのではないだろうか。

そして、東京や京都に学びながら大阪が新たな運動を提起し、そこから全体の運動が発展するというふうに、それぞれが牽引力の役割を果たしていくことの重要性も明らかになった。

さらに、世界行動計画の民主的実施という府職労の提言活動は、婦人労働者のみならず婦人全般の平等をはかる要求を実現していくという点ですべての婦人を結集し、政府の婦人政策の基本を問い直すたたかいであり、国政の革新、民主的自治体の建設という目標をもった、婦人運動の今日的課題として位置づけることの重要性を実践的に明らかにしたといえるのではないだろうか。

(大阪府職労婦人部長)
 

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