予算案可決後の今国会は鈴木・加藤議員の疑惑解明、対ロシアとの領土問題における二重外交の真相究明と医療改悪法案、有事法制制定との攻防となっています。
医療改悪は法案の中身や4月から実施される診療報酬引下げの具体的内容が明らかになるなかで国民の怒りが高まってきており、廃案をめざして引き続く運動の強化が求められています。
医療改悪法案には、現行の保険料値上げにかかわる大臣の専決条項に「保険料の減収」を追加していることが明らかになりました。
不況、リストラによる加入者減、賃金低下などで98年から連続して前年度比マイナスとなっている保険料の減収を今後も起こりうるとして、国会での審議を必要とせず、連続値上を通達だけで可能となる規定としています。今回の法案が可決されれば診療報酬と同様に国会の法手続きなしで保険料の値上げが可能となり、三権分立でなく、国民の声を反映する立法機関より政府の権能を強くするものになります。
4月から実施される診療報酬の引下げは、小泉首相が言う医者(医療機関)の収入減に止まらない重要な内容を含んでいます。今回は史上初の引下げ(2.7パーセント)と言われていますが(1)診療報酬全般の大幅引下げ(2)基本技術料の逓減制や包括化の拡大(3)保険医療の縮小と患者負担・差額徴収などが主な内容となっています。
診療報酬の引下げは、2.7%と言われていますが、再診料・外来管理下算の月内逓減制、消炎鎮痛等処置料の5回以降の半減など外来部門、とりわけ整形外科等の引下げが際立っており,医療経営の根幹を揺るがすものとなっています。民医連の試算でも300床規模の病院で年間5億円の減収になるといわれています。
このような事態は、診療規制を引き起こし、医療の質の低下、生命を脅かすものとなりかねません。
厚生労働省は、医療の「周辺部分」に限定していた特定療養費(保険外適用)を今回は、180日超入院患者の入院基本料や予約診療、200床以上病院の再診料など医療 本体部分に1挙に拡大してきました。点数引き下げによる保健診療収入の減収を差額徴収で補えとする、保険外負担の拡大であり、国民皆保険の空洞化を一層押し進めるものです。
入院基本料の引き下げに加えて平均在院日数の短縮、褥創対策・安全管理対策の減算、入院料や手術料に施設基準を設定し、基準を満たさないと減額するなど病院のランク付けを促進し病院の再編・淘汰を計ろうとしています。
今回の診療報酬の改定は、史上初めての引き下げという事で大きく取り上げられ、サラリーマン本人の3割負担とともに今回の医療改悪の柱のひとつになっています。
しかし、改定の手続きは保険料の値上げとは異なり、国会での審議なしでこの4月から実施されます。
これは、中央社会保険医療審議会(構成 健保組合連合会代表、連合代表、医師会代表等10名)が厚生労働省の諮問を受け、答申することで大臣の告示によって実施される仕組みとなっているからです。委員の構成は1応支払い側、診療側、公益委員という3者構成の形はとっているものの、国民の声が届かないところで患者負担を決定するものとなっています。今回の医療改悪は医療の市場化をめざす小泉構造改革の突破口に位置づけられたものであり引き続く介護保険見直し、年金改悪を控え重要なたたかいとなっています。